Soup Stock Tokyo」が、満を持してゆっくりと店内で飲食できる空間を福岡パルコ新館へオープンさせた。オープン当日、改めて新店舗をチェックするべく来福した遠山さんをお迎えし、新館のなかでも注目の的であるSoup Stock Tokyo福岡パルコ店の誕生エピソードをはじめ、遠山さんの会社、スマイルズのビジネスに対する考え方など興味深いお話をたっぷりと伺ってきた。">

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VOICE 来福した旬な著名人にお話を聞いてきました。

  • PEOPLE
  • 2014.11.21 Fri

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vol.59 遠山正道[株式会社スマイルズ代表]

株式会社スマイルズ代表

INTERVIEW

  • 遠山正道[Masamichi Toyama]
    株式会社スマイルズ代表
    1962年東京生まれ。三菱商事株式会社初の社内ベンチャーとして株式会社スマイルズを設立。2008年2月MBOにて100%株式を取得。現在「Soup Stock Tokyo」のほか、ネクタイブランド「giraffe」、新しいリサイクルショップ「PASS THE BATON」の企画・運営を行っている。近著に『成功することを決めた』(新潮文庫)、『やりたいことをやるビジネスモデル-PASS THE BATONの軌跡』(弘文堂)がある。

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自分と向き合う時間の長さと比例して、ひとは成長する

博多阪急と大丸福岡天神の2箇所にて、家庭用の冷凍スープ専門店を展開してきた「Soup Stock Tokyo」が、満を持してゆっくりと店内で飲食できる空間を福岡パルコ新館へオープンさせた。オープン当日、改めて新店舗をチェックするべく来福した遠山さんをお迎えし、新館のなかでも注目の的であるSoup Stock Tokyo福岡パルコ店の誕生エピソードをはじめ、遠山さんの会社、スマイルズのビジネスに対する考え方など興味深いお話をたっぷりと伺ってきた。

ロンドンの屋台は、優秀社員3人のうちのひとりの強い思いがあって実現しました。

京都駅にある某カフェで働く友人から、“Soup Stock Tokyoには、優秀社員に向けご褒美旅行があるらしい”という話を聞きました。Soup Stock Tokyoのスタッフに聞いたようだったのですが、本当ですか?

そうですね。ちょうど昨日まで、その旅行で社員と一緒にロンドンへ行ってきました。優秀社員は毎年発表するものなのですが、今年は6名。3人でひとつのグループとして、第1陣はポートランドへ。今回は、その第2陣としてロンドンへ行ってきました。

実際どんなところへ行かれるのですか?

そもそも優秀社員が決定したら、ミッションが与えられるんですね。私も一緒に行くから、「私をアテンドしてください」と。それで第1陣は、観光するだけではつまらないからと、NIKEの本社や広告会社のWieden+Kennedyの本社、ライフスタイル誌「KINFOLK」のオフィスを案内してくれました。Wieden+Kennedyでは、クリエイティブのキーマンである、ジョンC. ジェイにインタビューさせてもらったし、キンフォークでは編集長とお話することができて、とても贅沢な時間を過ごしましたね。そして第2陣では、ロンドン市内でSoup Stock Tokyoの屋台を出店するという貴重な体験をしてきました。

旅行を企画するというよりも大事な気がしますね。

ロンドンの屋台は、優秀社員3人のうちのひとりの強い思いがあって実現しました。成田空港店の店長が、以前から自分の店舗で味噌汁を出したいといってまして、これまで試作しては商品決定会議に提案し玉砕するということを繰り返してきていたんです。うちはメニューの提案から提供の仕方まで、細かくチェックが入るのでなかなか実現するのが難しいんですが、本当に懲りずに何度も挑戦する社員だったので、今回、いっそのことロンドンでテストマーケティングしてみようとなりました。

遠山さんは、国内外さまざまなところへ足を運んでいるイメージがありますが、福岡へ来たことはありますか?

これまでは少ないですね。Soup Stock Tokyoは15年目になるんですが、過去にも九州への出店のお話をいただいたことはあります。ただ我々は、駅ビルなどに出店することが多いんですが、なかなか双方の意向が合わなくて。今回は、天神エリアで地下鉄や西鉄電車の駅も近いし、オープニングというタイミングも良かったので話が進みましたね。

福岡のイメージはありますか?

おしゃれなイメージがあります。以前来たときは、大名エリアを歩いて見てまわったんですがいい感じのセレクトショップが多くて、こんなところでお店をやれたらなと思いました。あとは百道へ行ったとき、ネクサス百道レジデンシャルタワーにあるマイケル・グレイブスの建築や黒川紀章の素晴らしい建築を見て、埋め立て地にあかぬけたデザインの建築が目立っていて驚きましたね。福岡は建築が格好良いのと料理が美味しいというイメージもあります。

福岡パルコ店の誕生秘話を教えてください。また店作りで大切にしていることは何ですか?

新店舗ができた地下2階のフロアの中では、1番大きな面積を頂いているんですが、正直天井の低いことが気になっていました。入り口を閉ざしたり、間仕切りを多くしたりすると、窮屈になっちゃうなと。結果、お客さまの通路とつながって見えた方が広く感じると考え、福岡パルコ新館の共通スペースと同じ、天井と床の環境をそのまま生かすようにしました。

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お客さまからすると、共通空間の先にスッとうちの什器が並んで見えるようにしています。一般的な店舗構成でいうと、ここからここまでは自社の空間だから、共通空間と色や素材を変えて、看板を目立つように置くと思うんです。自分のお店の個性を出そうとするはずなんですが、うちは新館に馴染むことを大事にしています。

クリエイティブの親分が国産材に惚れ込んでいて、それにとてもこだわって作っていますね。

インテリアでとくにこだわっているものはありますか?

木材ですね。壁面や家具に取入れた木は、宮崎県の諸塚村のクヌギの木です。ちなみに、うちのクリエイティブの親分が木の博士みたいな人なんですが、彼が国産材に惚れ込んでいて、それにとてもこだわって作っていますね。現在、日本の木材の使用頻度が減ってきていて、林業がとても深刻な問題を抱えていて、それをどうにかしたいと思っているようです。うちも昔は、タモ材やブナ材が好きでよく使っていたんですが、それらは特に輸入材が多かったんですね。輸入材は違法伐採のものが多くて、違法伐採のものは自然環境の維持に対する考えもなくやっている場合が多く、伐採ばかり続けてはげ山になって放置されて終わるようなこともあるらしいんです。我々が知らず知らずのうちに、そういうことに手を貸してしまっている悪い状況がありました。扱い方が難しく、予算も高いという国産材を取り入れるようになるまでには、いろいろと苦労したようですが、うちのクリエイティブチームも頑張って、5年くらい前から国産材を使用しています。全国さまざまな産地の木材を使うんですが、今回は宮崎県産。今回使用したクヌギの木は、椎茸栽培用だったんですが、椎茸の国内生産の需要が落ち込み、手をかけてもらえなくなった木が成長し太くなり過ぎてしまい、椎茸原木としての使い道がなくなったものを使っています。ちなみに、東京にあるアトレ四谷店の木も諸塚村のもの。そこのは、木の皮をそのまま残して使っているのでこことは少し違った見え方で特徴的ですよ。実は、宮崎の小学校の修学旅行の一貫で、うちに朝食がてら諸塚村の木材を使った空間を見学に来られることもあるんです。

店内のインテリアでいうと、テーブル上に飾られているフラワーベースも特徴的でしたね。

そうですね。フラワーベースは熊本県天草市の丸尾焼の陶器製です。原料は陶石というもので、陶器を作る原料だけで作られたものです。一般的な陶器は、陶石以外にさまざまな原料を混ぜて使うことが多いんですよ。だからとても珍しいものです。

福岡店は、新卒3年目のホープというか、ユニークなキャラの社員が店長として店を任されています。

今回福岡で初のイートインスペースが出来たということもあり、接客サービスに関するこだわりも気になるところなのですが、店に立つひとにかける思いなどをお聞かせください。

福岡パルコ店は、新卒3年目のホープというか、ユニークなキャラの社員が店長として店を任されています。名古屋の中部国際空港店で働いていたスタッフなんですが、うちのオトコ劣勢社会において・・・とても珍しいことです。新卒でいうと、10人いたら男がひとりというなかで抜擢したひとなので楽しみにしています。

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遠山さんに“ユニークなキャラ”といわれているあたり、とても期待されていることが分かりました。どういった方なのですか?

彼が学生時代、内定を取る前に私の講演会へ何度か参加しているんですね。そこである日、私がトークイベントの最後に「同時開催している骨董市に行ってから帰ります」といったんです。すると彼は、骨董市の入り口で私を待ち構えていたんですよ。そして「お疲れ様です」とかいいながら、私にのど飴を1本くれました(笑)。あと別の講演会では、ホッカイロもかな。彼は本当に積極的で、見方を変えるとちょっと変わったやつなのかもしれないけれど・・・印象にはすごく残ったわけです。それから入社後もずっといじられキャラなんですが、周りから可愛いがられていますよ。店で彼を見かけたら話しかけてみてください。

スマイルズに入社したい一心だったことがよく分かるエピソードですね。

今は、新卒の男性社員が店長になったという話をしましたが、彼は名古屋から福岡へ異動してこれからもっと成長するはずです。Landscape Productsの中原慎一郎さんやD&DEPARTMENTのナガオカケンメイさんが、地方の良さを発信してきたからという背景もありつつ、世間的にも今は地方が注目される時代ですよね。博多は地方ではないのかもしれないけれど、東京から離れていろいろ試すことはすごくいいなと思っていて。私も、三菱商事から日本ケンタッキー・フライド・チキンに出向したときが転機だったような気がします。新しい事業をやるときのコツは「本社から遠くへ行くこと」。本社にいると、上層部のいうことに支配されたり、合理的に物事をすすめたりしてしまうから。事業は理屈だけではすまないところが多いから、本社から距離を置くって大事だと思うんです。

慣れていないところで力を発揮できるか、そこでスタッフの方々は各自の力を試すことができるんですね。

うちにはベンチャー推進室というのがあるんですよ。この間、そこから支援を経て、若い社員が新宿でバーを始めました。また外部の方に出資して、共同出資によるイタリアンの店をオープンしたり、アートディレクターの会社を作ったりなどもしています。新しい事業については、しっかり応援できる環境作りをしていきたいと思います。

仕事のモチベーションは、すごく個人的なことに由来していると思うんですね。

個性をアピールすることができる魅力的な環境ですね。

ちなみに、スマイルズの公式ウェブサイトにある私のブログで仕事についてちょうど昨日書いたので良かったら見てみてください。内容は声に出すと恥ずかしいので、後で読んでもらえたら(笑)。タイトルは「自分の仕事は恋のようである」で、話を13個に分けてまとめています。仕事のモチベーションは、すごく個人的なことに由来していると思うんですね。楽しいことの反面、辛いことも多いからこそ、自分にとって特別な存在であることが重要なポイント。Soup Stock Tokyoだって、実際に利益が安定したのは8年目以降でした。開店当初から売上と評判は良かったけれど、利益は残念ながら別問題で。売上は出店してれば上がるし、頑張っていれば評価も高くなるんだけど赤字もありましたね。これ以上続けるのは無理なんじゃないかと、周りから足止めをくらうこともたくさんあったけれど、そんなときに、個人の思いとか、粘りみたいなのが効いてくるんです。私が仕事を恋のようであると例えたのは、仕事がそのひとにおいての責任をつらぬくことと同じだから。

渋谷や新宿で新しく店を出すことよりも、今回のように福岡に出すことにすごく意味があると思っています。

話は戻りますが、地方でひとりでやるのはすごくいいことだと思っていて。誰かを頼らずやりきるって、ひととして強くなれるんです。お客様とのコミュニケーションにおいても、想定問答なんかにおさまらない状況がたくさんあり、その場その場で判断を迫られる。何に対しても自分事で、無数のジャッジの連続があるから成長するんだと思います。社員には自分の地元に店舗があったら、そこに行きたいと志願してもらいたいですし、故郷へ一度戻って地元のひとや食材の良さともう1度つながって、自分らしい仕事を見出して欲しいです。地元でしか得られない情報と、スマイルズで得た情報とをうまくミックスさせながら、仕事を完全に自分のものにしてくれたら。それに対し会社はお金とノウハウを与えるので、やる気とアイデアを使ってぜひ新しいことを始めて欲しい。Soup Stock Tokyoは、渋谷や新宿で新しく店を出すことよりも、今回のように福岡に出すことにすごく意味があると思っています。

INFORMATION

Soup Stock Tokyo福岡パルコ新館にオープン!
福岡市中央区天神2-11-1福岡パルコ新館B2F
営業時間:10:00〜23:00(L.O.22:30)
店舗紹介についてはこちら

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  • 遠山正道[Masamichi Toyama]
    株式会社スマイルズ代表
    1962年東京生まれ。三菱商事株式会社初の社内ベンチャーとして株式会社スマイルズを設立。2008年2月MBOにて100%株式を取得。現在「Soup Stock Tokyo」のほか、ネクタイブランド「giraffe」、新しいリサイクルショップ「PASS THE BATON」の企画・運営を行っている。近著に『成功することを決めた』(新潮文庫)、『やりたいことをやるビジネスモデル-PASS THE BATONの軌跡』(弘文堂)がある。

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