『行け!稲中卓球部』で圧倒的な人気を獲得した漫画家・古谷実が"終わりなき日常"を生きる若者の閉塞感を容赦なく描ききった超問題ベストセラーコミック『ヒミズ』。長く渇望されつつも「まさか」と思われていたこの作品の実写化を実現させた、今日本で最も目が離せない鬼才・園子温監督が、1/14[土]の全国公開に先駆け、日本最速で福岡で行われた一般試写会に登場されました!
AFRO FUKUOKA編集部も、監督の生の声を聞くことが出来る貴重な舞台挨拶にお邪魔させて頂いたので、当日の様子をレポートします!ではどうぞ!!

◎まず、福岡の印象をお願い致します。
20代の頃、福岡に住んでいたこともあるので、ちょっと甘酸っぱい思い出のある都市です。今日着いたのですが、なんとなくノスタルジックな気分になりました。去年もプライベートで来てるんですけどね。今回の来福でまた感じ入っていました。
◎それでは早速質問です。これまでオリジナル脚本で制作をされてきた監督にとって、今回が初となる原作ものの作品となりましたが、今までの映画との作り方の違いはありましたか?
今までは全てオリジナルの脚本で作ってきたので、わざわざ自分の色を出す必要は無かったんです。だからどうやって原作に忠実に映画に移植するかということに注力しました。そこが一番大事なところでした。漫画を原作にした映画はものすごくたくさんあるのですが、僕の目からすると、あまりうまくいってないものが多いかなという印象がありました。なので、何がうまくいってないのかの原因を研究したりはしました。結果、原作にあるスピリットを忘れないようにすることが一番大事なんだなと最終的には思いましたね。漫画原作のものは、たいてい見た目に忠実な"コスプレ大会"になりがちなので、オーディションで似てる子を選ぶっていうのはちょっと違う気がしていたので、その辺は最初から気をつけていました。オーディションで重視したのは、やはりそこに「住田」のスピリットを感じさせられるか、という点。見た目ではなく、目に見えないところで実写に移植するという考え方ですね。
◎主演の染谷さん、二階堂さんのお二人とも、ヴェネチアで大変高い評価を受けましたが、監督がお二人に対し演出する際に特に大切にした点はありますか?
オーディションで、どのくらい「闘魂」を持っているかというのを判断して決めました。オーディションでは芝居の良し悪しは見ていないです。役が決まってから、稽古を繰り返すことで少しずつ良くなっていったという感じですね。その中で、今まで自分で作ってきた殻とか枠をどんどん壊し、日々新しくなって、自由を獲得し、芝居の表現力が増していくというのは常に感じていましたね。15歳の青春を描くにあたり、役の年齢に近い二人を選んだので、彼らが自分自身に向かい合って芝居をすることで、その演技はリアルなものとして現場に積み重なっていきました。
続いて、会場のお客様からのご質問です。

◎「ヒミズ」のキャストについて質問です。園監督の最近の作品にも出演されたのキャストが多く出ていらっしゃいますが、キャスティングの意図などはありましたか?
最初は意図していなかったんです。みんなに、映画をやるから集合してくれと言ったわけではなかったのですが、配役を一人ひとり選んでいるうちに「僕の映画でデビューしたことだし、じゃあ吉高(由里子)もいっちゃうか」というノリでやっていたらこうなった感じです(笑)。他には「愛のむきだし」の西島(隆弘)君も出ているし、そう言った意味では一つの節目が来たと思っています。
◎古谷実さんの作品で映画化したいものはありますか?
今回はいろいろ読んで、一度迷ったのですが「ヒミズ」にしました。またいつかやりたいなと思うものはあるんですけど...、まあ、ちょっと大人の事情で言いづらいところもあります(笑)。「ヒミズ」以降の作品もいいですが、「稲中」も実写にしてみたいですね。ちょっと冒険的ですけど。
◎映画を作るうえにおいての、ポリシーや信念を教えてください。
ここまできたら、譲りたくないなというものはありますね。何億もかかるような大作の日本映画のオファーがあっても、台本が面白くなかったらやりません。一回踏み外すと、永遠に止まらない列車に乗って一生降りられないんじゃ無いかと。信念を譲らずに、低予算でも良い映画を撮っていきたいなと思います。
◎奥様で女優の神楽坂恵さんもご出演されていますが、この映画にまつわるお二人のエピソードがあればお願いします。
ネタばれになるかな?「冷たい熱帯魚」であんなに憎みあった二人が、今回はとても仲良くやっている。それはやっぱり僕のパーソナルな問題が関係しているのでしょう。あとは、小道具の人に、こっそり「指輪のサイズをチェックしといて」って頼みました。これは計画的犯罪で、あとで不意打ちで婚約指輪を渡すために職権乱用でお願いしました(笑)。おかげで、事前に指輪を買って渡せたので良かったです(笑)。
◎今回「ヒミズ」を映画化しようと思った経緯、他の作品との違いなどがあれば教えてください。
最初のきっかけとしては、もうそろそろ原作ものをやってみようと思っていたんです。それで、プロデューサーが小説や漫画をたくさん持ってきて、全部読んだのですが、初めての作品としてはどうかな?という思いがあって。これを簡単に比喩で言うと、僕が乙女で、初めての男性を探している。最初の相手は慎重に選びたい、というイメージ。合う合わないっていう、その勘だけでした。それで、なかなか望んだ原作が見つからなかったこともあり、じゃあ自分から持って行ってみるかなとパッと思いついたのが「ヒミズ」でした。理由を良く聞かれるのですが、好きになった相手のどこがいいとかって、良く分かんないんですよね。謎としか言えない。つまり初めての相手は「ヒミズ」にしたかったってだけだと思うんです。今後は色んな原作を扱えるようになれると思うんですけどね。最初は色んな意味で、自分にフィットしたものをという思いがありました。

◎原作ものが持つ、オリジナルものとは違う意味の面白さなどはありましたか。また、今後オリジナルを作る時に応用できそうな部分などがあれば教えてください。
原作ものの中でも、特に漫画は、映画化するのが実はものすごく難しいと思うんですよ。漫画はタッチや絵で見ているので、これをそのまま実写にした場合、全く違うものになるというのは明らかなんです。例えば、僕の大好きな伊藤潤二さんの漫画なんかも、あのタッチじゃなければダメなんです。ストーリーの面白さだけで漫画が成り立っている訳ではない。例えば演出なども、コマ割りの手法で一枚絵を大きくバーンと見せられる漫画と、決められたスクリーンの枠内での演出を考える映画では全く違うもので。漫画の持つ説得力と、映画の持つ説得力が全く別物であるということがものすごく難しくて。でもそれが非常に楽しかったです。これからは漫画原作はもちろん、小説もやってみたいですね。今回の原作ものを手掛けた経験による、オリジナルへの反映などはこれから出てくると思います。昔「時効警察」っていうドラマの後、「愛のむきだし」を撮った時、意識していないけど、コミカルな部分が自然にできるようになっていたっていう経験あるので。気がつかないうちに影響してくると思います。
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全ての質問に一つ一つ言葉を選ぶように、丁寧に答える園子温監督。
鬼才と呼ばれる監督の、普段ははかり知れない内面に触れることが出来る機会とあって、会場に集まった福岡の熱いファンからの質問は時間いっぱいまで続きました。
今回監督が満を持して手掛けられた映画「ヒミズ」。
15歳にして未来を失くしてしまった少年と、与えられないから故に愛にすがりつく少女。ひりつくほどに感情を爆発させる若者たちの怒りと愛が、衝撃的なまでに観る者の心を揺さぶる感動作です。公開は2012/1/14[土]。原作ファンの方も期待を裏切られることのない、まさかの「ヒミズ」実写版。ぜひ劇場でお楽しみ下さい。
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【作品紹介】

©『ヒミズ』フィルムパートナーズ
『ヒミズ』
2012/1/14[土]公開
T・ジョイ博多/KBCシネマ1・2/TOHOシネマズトリアス久山 他全国ロードショー
監督・脚本:園子温
原作:古谷実「ヒミズ」(講談社『ヤングマガジン』KCスペシャル所載)
出演:染谷将太 / 二階堂ふみ / 渡辺哲 / 吹越満 / 神楽坂恵 / 光石研 / 渡辺真起子 / 黒沢あすか /
でんでん / 村上淳 / 窪塚洋介 / 吉高由里子 / 西島隆弘(AAA)/ 鈴木杏